кунинокотоブログ

ユーラシア大陸と食べ物と区画とメタル

今こそウズベク看板の素晴らしさについて語ろう

今、中央アジアが熱い。そこで、2019年10月に念願の中央アジア初上陸をしてきた。いずれは全制覇を目指して、第一弾としてまずはウズベキスタンに行ったのだが、そこでウズベク看板の魅力に取りつかれてしまったのでそのお裾分け()をしたい。

 

 

◆はじめに

ウズベキスタンは控えめに言って素晴らしかった。もっと言えば素晴らし過ぎた。日本で何かと誤解されやすい「スタン系」一派でありながら今一番キている旅行先ということもあり、現地では日本人団体客は沢山見たし、女子旅と思わしき女性だけの個人旅行者も数組見た。(オッサン1人旅はそんなに見なかった)

ウズベキスタンの素晴らしさはインターネットで検索すればいくらでも出てくるし、最近はウズベキスタン専門のガイドブックもある。というわけでウズベキスタン旅行記・体験記はそちらで見てもらうとして、今後ウズベキスタンに行くであろう皆さんには、多分ガイドブックには載らないウズベキスタンの看板の魅力について知ってもらいたい。

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単体で見ると何の変哲もない立て看板ではあるし、最初は自分も何も感じなかった

 

◆自立タイプの看板(立て看板)

中央アジアを歩いて居ると沢山の立て看板を見る。しかしとにかくどこも同じようなメニューのラインナップ、同じようなフォント、同じようなデザイン、同じような色合い(赤~黄色系)…一度意識し出すと気になってしょうがない。

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後で写真を見返していて気づいたがこの看板なんか1枚目のものとほぼ同じ。でも画像の配置が微妙に違うし店ごとにオリジナル要素があるのかも…

 

そもそも、ウズベキスタンの庶民的な食堂はだいたい同じようなメニューで同じようなものしか出さない(様に思えた)。日本の飲食店のように創作メニューの開発に精を出したり、同じようなメニューであっても他店との差別化を図ろうとする意思は無さそう(に見えた)。

看板もそれに倣っており、殆どの飲食店では最初に大きく「ош」(オシュ、ピラフみたいなもの)と書いてあり、だいたいメニューには「лагмoн」(ラグマン、スープうどんみたいなもの)、「шурба」(ショルバ、スープみたいなもの)、「манты」(マントゥ、饅頭みたいなもの)、「шашлык」(シャシリク、串焼き)などなど、同じようなラインナップが並ぶ。

寧ろ、いざお店に入るとメニューが無い店にいくつか出くわした。表の看板が全てを物語ってると言うか、みんな大体同じようなものしか頼まないからメニューなんて甘ったれたものは必要ないのかも知れない。(そのおかげで、お会計するまで値段が分からないし、請求された値段が正規価格なのかも分からない)

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このお店にはナン(中央アジアのパン)とかチャイ(中央アジアのお茶)セットの写真がプリントしてあるなど、他店との差別化を感じる。そして「ламoн」という文字が見えるが、これはラマンという別の食べ物なのかラグマンの「г」がタイプミスで抜けただけなのかは謎

 

◆壁掛けタイプの看板

勿論この傾向は立て看板に限った話ではない。壁張り付けタイプについても紹介しよう。ここでもオシュ、ラグマン、マントゥといった王道料理が並んでいる。

そういえばこのお店を見かけた時、僕はオシュが食べたくてしょうがなかった。そこでオシュを最上部に掲げているこのお店に入ったのだがこのお店にはオシュは置いていないようだった。というか写真中央部の青い看板の軽食メニューがその店のメニューらしく、とりあえず油たっぷりの揚げパンと、砂糖が入りすぎて飲むと逆に喉が渇くお茶をいただいた(揚げパンの威力が強力だったので結局お茶はおかわりした)。

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両側の紫色看板は一体何だったのかは謎。ちなみにошはウズベク語(及び近隣民族語)だがロシア語ではпалов(プロフとかパロウとか)とも言う。と、道中で出会ったウズベク人に教わった

 

しかしどの看板も若干違えど殆ど同じような食べ物画像が踊っている。みんなこのためにわざわざ自前で料理画像を調達するのだろうか?

と思いながらこれらの画像をまじまじと眺めていると…

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真ん中あたりに何やら文字が…

 

マントゥの画像を拡大してみると「ISSYK-KUL.ONLINE」と書いてある模様。この店の名前か?という線もあるがイシククルとは隣国キルギスの有名な湖なのでこの店がそんな名前を付けるとも思えない…(台湾のお店が「琵琶湖」とかつけたり日本のお店が「九寨溝」とかつけるようなものか?)

それか、上記のサイトが実は「いらすとや」的な立ち位置で転載自由なのかもしれない…(だとしたら画像に自サイトの名前なんか埋め込まないか)(いや、別にこれが無断転載と断定しているわけではない)

 

 

◆食堂以外のバリエーション

そしてこのような看板の傾向は食べ物屋に限った話ではないようで、コスメ用品の広告もこの通り。

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色合いとか画像の配置に目が行きがちだが、よく見ると唇の画像やモチーフが大量にあって若干の恐怖感を覚える

 

とりあえずスタイリッシュなコスメ道具を沢山並べればそれだけスタイリッシュ度が増すだろうみたいな、足し算のみの理論が清々しい。

コスメの宣伝には必要と思われるオシャレさとか洗礼された感じとか、そういった要素は大丈夫なのかと心配になるが、むしろこちらセンスの方が先を行っているのかもしれない。そう思って考えてみると僕は普段コスメの広告など全く見ないし、実は日本の広告もこんな感じなのかな?

 

そしてこの「沢山並べたヤツが一番強い」理論はウズベク人の心の拠り所、ナン売り場の看板にも表れている。

このナン販売所では上部の看板は少しばかりスタイリッシュで普通のお店のように見えるが下部に目をやると完全にいつもの""あの""感じで、画像ペーストのオンパレードである。

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個人的にはナンの画像は1種類につきひとつだけあれば情報としては充分な気がする

 

確かにウズベク人はナンを沢山並べる。並べるだけではなくて積み上げる。沢山積みあがって光沢をもったナンを見ると、確かにおいしそうで買ってしまいたい衝動に駆られる。

それは分かるのだが、それを画像でも表現しなくても良いのではないか。というかもっとそれっぽくなる画像の作り方は無いのだろうか?

 

◆おわりに

ウズベキスタンに行ってから数か月が経過したが、今でも時折あの看板を思い出す。

情報過多なように見えて大した情報を得られないような気がするあの看板だが、遠く離れた日本人の心をここまでつかむ時点で、実は宣伝効果としては侮れないのかもしれない。

ちなみに冒頭で中央アジア第一弾としてウズベキスタンに行ったと書いたが第二弾があるのかは全くの未定である。

また魅惑のスタン系国家の地を踏めることを毎日祈っている。(唯一神アッラーに)

 

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これは正真正銘の3次元のナン画像だが、あの看板たちを見続けると何故だか2次元の合成画像に見えてくる不思議