あの日の幻の重慶小麺屋(前職語りポスト~後編)
突然だが、中華料理が好きだ。
しかし、僕は中国にろくに行ったこともない割には「広東省と四川省は地理も文化も全然違うのに広東料理を売りにしてる店で"四川風××"が置いてあるのはおかしい」などと面倒くさいことに拘るタイプの人間なので、日本人がやってる所謂「町中華」よりも中国人がやってる(多分)本場中華に惹かれるのである。
※町中華もあれはあれとして好きです
日本中華(便宜上こう呼びます)とは違い日本人の方に向いていない味付け、おぼつかない日本語でのやりとり、中国の繁体字または簡体字で書かれている漢字のメニュー、ドライ過ぎるかフレンドリー過ぎるかの両極端な接客態度、割と適当な盛り付けなどなど、五感で異国を感じることができるからだ。
以前の僕の職場の近くに、もともと居酒屋だったところ(ランチ営業ではお世話になっていた)が閉店して、重慶小麺を出す店に変わっていた。
重慶小麺?
蘭州ラーメンなら知ってるつもりでいたがやはり中国は食の層が厚い。調べてみると中国第五の都市でどこの省にも属さない直轄市のようだ。
意を決して入ってみると、麺系(食事メニュー)は券売機で、一品料理(飲みメニュー)は口頭注文という画期的なスタイル。もっと言えば麺類もPayPayが使えるので券売機を使う必要がない。
日本語が割と流暢なおばちゃんにオススメを聞いて無難に重慶小麺を注文。
流石、もともと四川省の一部だったと言うだけはあり分かりやすく真っ赤な見た目に軽く戦慄を覚えつついただくも、そこまで辛さに強くない自分でも美味しくいただける。(辛いけど)
当たり前のように控えめに添えられるミニ肉まんが良い
ところで、最近は日本内の食品表現でも"麻辣"という言葉を使うようになってきた。
僕は辣(唐辛子の辛さ)はなんとかいけても麻(山椒の辛さ)はダメだ。
その事をおばちゃんに話すと、坦々麺は"麻"が無いからオススメと言う。
坦々麺のイメージを覆す白いビジュアルもそそるが、"麻"で会話が通じるところが流石と感じる
ある時は他のメニューもいただこうと思い坦々麺が"麻"無しだったから大丈夫だろうと軽い気持ちで汁無し坦々麺を頼んだらまさかの"麻"全開で大火傷をしたこともあった。
そもそも汁無し坦々麺と言われて想像する物と大分ビジュアルが異なる気がする
それ以来、注文の度におばちゃんに「"麻"抜きで」と頼んでいたらありがたい事に顔パスで麻抜きとなるという特権を得られました。
これは別の日に注文した重慶小麺だが、何回か通ううちに同じ料理の写真をひたすら撮り続けることに疑問を感じ撮るのを止めてしまった
ある日お店に行くと、メニューに手書きで「日曜日の朝だけメニュー」として油条(中華式揚げパン)が追加されいる事を確認。
これはこのために日曜日出勤(職場近くの店なので)もやむなしかなぁ…と考えていた折に、ある日突然「設備故障のためしばらくお休みします」との張り紙とともに消息を経ち、そのままお休みが明けることなくGoogleマップのステータスが「閉業」に変わってしまった。
そして僕も程なくして転職することになりそれ以来その街に行くことは無くなった。
あの絶妙な重慶小麺を提供し続けてくれたおばちゃんは、今も日本のどこかにいるのだろうか。それとも祖国に帰っているのだろうか。
いつか重慶とかに行った時に会えることを祈る。(個人的には中国中央部であれば重慶・四川よりも西安に行ってみたいです)
おしまい