кунинокотоブログ

ユーラシア大陸と食べ物と区画とメタル

蘭州ラーメンはウイグル料理の代わりになり得るか

突然だが(このブログにおいてはそんなに突然でもないが)、ここ数年間の間、中国の西北部にある新疆ウイグル自治区に行きたくてしょうがない。

しかしいくら中国が日本のお隣に位置していると言えどその広大な国土の西の端とくれば日本からの飛距離は半端ではない。

東京から新疆ウイグル自治区の首府であるウルムチへ行く飛行機をスカイスキャナーで検索したところ、最短でも10時間以上かかるらしい。とても日本の貧弱な3連休ごときでぷらっと行けるところではないのだ。

 

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飛行機国内線の直行移動で5時間越えは日本ではなかなか考えられない

 

なかなか行けないならば日本国内でウイグル料理を出す店に行くと言う代替案があるが、残念ながら東京にあるウイグル料理店はかなり限られているし、どちらかというとみんなで囲むエスニック料理屋枠なので、1人でぷらっと入って定食を頼むという感じではない。ような気がする。

 

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2020年現在3店のみが確認されている

 

いくらウイグルといえど一応国としては中国なのだから、中華料理くらい身近に新疆ウイグル自治区の料理を食べることができないものだろうか。

 

そんな事を毎日考えていたところふと気が付いた(普通にタイトルに書いてるが)…もしかすると、蘭州ラーメン屋に行くことで僕の中のウイグル欲が満たされるかもしれない。

蘭州ラーメンとはその名の通り甘粛省省都である蘭州が世界に誇るラーメンで、この甘粛省新疆ウイグル自治区と隣接している事からも分かる通りイスラム教徒が多く、牛肉を使う事で有名な蘭州ラーメンも正真正銘のハラール食なのである。

 

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4e/China_Gansu.svg

内モンゴル自治区寧夏回族自治区新疆ウイグル自治区と民族自治区に囲まれまくっている甘粛省はなかなかアクロバティックな形をしている

 

ここで誤解しないで欲しいのは、ウイグル料理を食べたいけど蘭州ラーメンで我慢する、的なものではない。蘭州ラーメン蘭州ラーメンで異なるステージ上の食べ物であって比較したり代替したりできるものではない。

ここでの僕の提案とは、ハラールを売りにする蘭州ラーメン屋で汁無し麺のメニューを頼むとウイグル名物・ラグメンが出てくるのではないか?という事である。

という事で、早速"リアル・チャイナタウン"である池袋で調査してきた。

 

エントリーNo.1:蘭州拉麺店 火焔山

池袋における中国勢力の総本山、北口エリアに君臨する有名店(多分)。店内ではバッチンバッチン麺を打つ音がデカ過ぎて初めて行くとビクッとします。

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入り口にベビーカーが置いてあるところを見ると地域密着型なのかも知れない

 

メニューを見る限り、羊肉串焼きやナンなどの説明として新疆を謳っているので期待が持てる。というわけで、殆どの人が注文するであろう牛肉麺ではなく「焼きそばクミン味」を注文。理由は英語表記が"Xinjiang Style Fried Noodles"となっていたのと("Xinjiang"とは新疆のこと)、単純にクミンが好きだったからだ。

出てきたものは手打ちならではの太さが若干不揃いでコシのある麺、羊肉とクミンのエスニック感が合わさって""控えめに言って最高""だった。

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麺の種類を選べるので三角麺を選んだところ、炒め麺だと角が取れちゃうからと、メニューに載ってないサイズ(細麺よりも太い)の丸麺で作ってくれた

 

エントリーNo.2:薩斐(Safei)蘭州ラーメン

こちらは北口ではなく西口にあるお店。店名に「池袋本店」とあったが他に店舗があるのかは不明。少なくとも検索しても出てこなかった。そしてホームページの作りが先程紹介した火焔山と全く一緒。色々と考えさせれられるところが多い。

しかしながら正面看板には、砂漠の絵、ハラール認証、「西北料理」の文字と、期待できる要素しかない。

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後になってこの写真を見返してみると、お店に対して垂直に突き出ている側の看板はモノクロの麺打ちシーンがプリントされていることに気づいた。これは本当に看板に載せる必要のある情報だったのだろうか

 

ここで頼んだものは蘭州混ぜ麺。これは炒め麺ではなく餡掛けうどん(というかラグメン)に近いもので、ここでも麺の種類が選べたので三角麺を頼む。これも大当たりで、コシのある麺にちょっぴりスパイスの香りがする独特の具が合わさって、"マーベラス"としか言いようがない代物であった。

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初めて行く牛肉麺屋で牛肉麺を頼まず、ランチタイムにもかかわらずランチメニュー以外のものを頼む感じ、富士そばに行って煮干しラーメン(一部店舗限定)を頼むような心地の良い罪悪感がある

 

エントリーNo.3:火焔山 新疆・味道 

これは最初に紹介したお店の系列店。もうはっきりと「新疆」と書いてある通り、そっちの料理を売りにしていることがヒシヒシと伝わってくる。

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ついに看板の文字にウイグル語が登場

 

店に入ると、店員がメインの客席で堂々とディナー用と思しき串焼きの仕込みをしていて入店客に見向きもしない雰囲気に本場の味を確信しつつ、ランチメニューにある新疆風ピラフ(ポロ、プロフのことですね)に後ろ髪を引かれつつも、ここはラグメンをストイックに味わいたいという意志から牛肉のラグメンを注文。そちらがこれ。

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見た目は100点

 

食べた感想としては、文句なしに美味い、でもなんか違う、というものであった。

出てきたのは完全にラグメンの見た目をしているし、とても美味しかったのだが、なんか違う。味が中華丼的だったというか、ウイグル料理っぽくないのだ。これは確かに新疆ウイグル自治区で食べられている料理なのかもしれないが、あくまでも中華料理であって、ウイグル族の民族料理ではないというか…

まあ、店員さんはみんな漢民族のようだし、これはあくまでもウイグル料理ではなく新疆地方の料理なんだと思えば看板に偽り無しですね。ということで、ウイグルの香りを求めていくと少し違和感があるかも知れないが、イスラム中華を食べる!というつもりで行くと良いかと。味は流石中華という感じで美味でした。

 

 

結論

こうやって中国の西北にあたる地域の料理を食べ歩いたが、そこで提供されるものは確かにウイグル料理っぽいしこれはこれでとても美味しいんだけど、やっぱりこれは中華料理なのだ、という当たり前のことと、中国西北料理というジャンルの奥深さであった。

これからはウイグル料理の代わりに中国西北料理を食べようなんて失礼な事をせず、ちゃんと西北料理を食べに行く意思を持ってこれらの料理屋を訪れなければならないと強く感じたのである。(またディグるべき食ジャンルが増えてしまった)

 

 

おしまい

 

 

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やっぱりウイグル料理はウイグル人のお店で食べてこそ美味しい