あの日の幻の重慶小麺屋(前職語りポスト~後編)
突然だが、中華料理が好きだ。
しかし、僕は中国にろくに行ったこともない割には「広東省と四川省は地理も文化も全然違うのに広東料理を売りにしてる店で"四川風××"が置いてあるのはおかしい」などと面倒くさいことに拘るタイプの人間なので、日本人がやってる所謂「町中華」よりも中国人がやってる(多分)本場中華に惹かれるのである。
※町中華もあれはあれとして好きです
日本中華(便宜上こう呼びます)とは違い日本人の方に向いていない味付け、おぼつかない日本語でのやりとり、中国の繁体字または簡体字で書かれている漢字のメニュー、ドライ過ぎるかフレンドリー過ぎるかの両極端な接客態度、割と適当な盛り付けなどなど、五感で異国を感じることができるからだ。
以前の僕の職場の近くに、もともと居酒屋だったところ(ランチ営業ではお世話になっていた)が閉店して、重慶小麺を出す店に変わっていた。
重慶小麺?
蘭州ラーメンなら知ってるつもりでいたがやはり中国は食の層が厚い。調べてみると中国第五の都市でどこの省にも属さない直轄市のようだ。
意を決して入ってみると、麺系(食事メニュー)は券売機で、一品料理(飲みメニュー)は口頭注文という画期的なスタイル。もっと言えば麺類もPayPayが使えるので券売機を使う必要がない。
日本語が割と流暢なおばちゃんにオススメを聞いて無難に重慶小麺を注文。
流石、もともと四川省の一部だったと言うだけはあり分かりやすく真っ赤な見た目に軽く戦慄を覚えつついただくも、そこまで辛さに強くない自分でも美味しくいただける。(辛いけど)
当たり前のように控えめに添えられるミニ肉まんが良い
ところで、最近は日本内の食品表現でも"麻辣"という言葉を使うようになってきた。
僕は辣(唐辛子の辛さ)はなんとかいけても麻(山椒の辛さ)はダメだ。
その事をおばちゃんに話すと、坦々麺は"麻"が無いからオススメと言う。
坦々麺のイメージを覆す白いビジュアルもそそるが、"麻"で会話が通じるところが流石と感じる
ある時は他のメニューもいただこうと思い坦々麺が"麻"無しだったから大丈夫だろうと軽い気持ちで汁無し坦々麺を頼んだらまさかの"麻"全開で大火傷をしたこともあった。
そもそも汁無し坦々麺と言われて想像する物と大分ビジュアルが異なる気がする
それ以来、注文の度におばちゃんに「"麻"抜きで」と頼んでいたらありがたい事に顔パスで麻抜きとなるという特権を得られました。
これは別の日に注文した重慶小麺だが、何回か通ううちに同じ料理の写真をひたすら撮り続けることに疑問を感じ撮るのを止めてしまった
ある日お店に行くと、メニューに手書きで「日曜日の朝だけメニュー」として油条(中華式揚げパン)が追加されいる事を確認。
これはこのために日曜日出勤(職場近くの店なので)もやむなしかなぁ…と考えていた折に、ある日突然「設備故障のためしばらくお休みします」との張り紙とともに消息を経ち、そのままお休みが明けることなくGoogleマップのステータスが「閉業」に変わってしまった。
そして僕も程なくして転職することになりそれ以来その街に行くことは無くなった。
あの絶妙な重慶小麺を提供し続けてくれたおばちゃんは、今も日本のどこかにいるのだろうか。それとも祖国に帰っているのだろうか。
いつか重慶とかに行った時に会えることを祈る。(個人的には中国中央部であれば重慶・四川よりも西安に行ってみたいです)
おしまい
あの日の幻の台湾料理屋(前職語りポスト~前編)
突然だが、台湾料理が好きだ。台湾は過去に一度しか行った事がないが、ローカルフードの数々は個人的な好みど真ん中で、今でも恋しくて毎週末行きたいくらいだ。
そんなことを考えていたとき、自分が以前勤めていた職場の近くに台湾を謳う中華料理屋ができた。そこはそれまでは所謂、中国人のいる大衆中華料理屋だった。食べ飲み放題3000円とかをよくやってるアレだ。
通常であれば素通りしてしまうところだが台湾と言われると黙っていられない。
しかし油断できないのは、台湾の文字が踊っていても実は台湾じゃないというパターン。ここみたいに。↓
ここはここでなかなかディープなローカル中華を味わえて良かったのだが閉店してしまった。あの人は今どこにいるのだろう
という訳で意を決して入店して小籠包と牛肉のクミン炒めを注文。小籠包は台湾っぽいからという理由で、牛肉クミン炒めはただ単に僕がクミンが好きという理由だけでそれぞれ選んだ。
ちなみに小籠包だが、過去一度だけ台湾に旅行に行った時に僕はとにかく現地のご当地グルメを沢山食べたいと意気込んでいたため、小籠包みたいなメジャーな料理なんてどこでも食えるとイキっており小籠包を食べず仕舞いだった。
出てきたものは皮が薄くてモチモチした、いかにもな台湾小籠包で、ここに来れば鼎泰豊のたっけえ小籠包食わなくて良いじゃん!と喜び勇んだものであった。
牛肉クミン炒めは美味しかったけどクミン控えめだった。大陸中華料理店のような、食材本来の味を抹殺するかのごとくクミンをドバドバ行かない控えめさが台湾らしさなのかもしれない
台湾小籠包の皮だけだと小麦成分が少なかったため、追加で頼んだ豚肉を中華まんで包んだようなものは、ほんのり八角が効いててガッツポーズ不可避。八角推しとしてはたまらない味付けだった。ちなみに全品300円也。
豚肉に八角という組み合わせ、どうしても魯肉飯を思い起こされる。ちなみに個人的な推し台湾フードは不動の一位で魯肉飯
この店はランチもやっていて、点心セットなるものがあるらしい。もう一度小籠包を食べてみたくなったので今度はランチに来店、頼んでみた。
点心セットの名に恥じない、いやそれ以上の圧倒的な"白さ"を誇る定食が登場した。
眩しいほどに白い
水餃子、焼売、小籠包はもちろんのこと白米やスープ、デザートの杏仁豆腐まで白い。おまけに食器も白い。何この白さ。白定食かよ。
しかしスープを飲んで覚醒。見た目普通の卵スープなのに八角めちゃ効いていて最高。スープだけではなくて肝心の点心も白米も杏仁豆腐も美味くて、白飯ならぬ白い食べ物は最高という結論に達した。
またある日は豚肉ご飯的なのを頼むとあの台湾独特の八角と甘いもの味付けの、まさに台湾ストリートフードさながらの味付けが高ポイント。ただ、個人的に気になったのはワンタンスープのワンタンがなかなかの暴虐っぷりであることである。
左上の小皿は麻婆豆腐なんだけどバランス的にはワンタンスープと麻婆豆腐の器が逆な気がする
小籠包の皮の薄さと反比例するかのような分厚そうな皮、まるでジョージア料理のヒンカリをそのまま小さくしたようだ。
上記は都内のロシア料理屋でヒンカリを食べた時のレポートだが、記事中に出てくるヒンカリの写真よりも記事中に貼られている「ヒンカリのWikipediaページのリンク」を参照した方が多分僕の言わんとしていることが伝わると思う
そしてもちろん見た目通りの皮の食べ応え。ワンタンスープだが皮の印象しか残ってないくらい。この店…できる…と感じた瞬間であり、これから毎日リピートすることが確定した瞬間でもあった。
…と思っていた最中、ある日「諸事情のため一旦お休みします」との張り紙とともに消息を経ち、そのままお休みが明けることなく他の中華料理屋(いかにもオーソドックスな中華居酒屋)に変わってしまった。
そして僕も程なくして転職することになりそれ以来その街に行くことは無くなった。
あの絶妙な台湾料理を提供し続けてくれたおっさんは、今も日本のどこかにいるのだろうか。それとも祖国に帰っているのだろうか。
いつか台北とかに行った時に会えることを祈る。(台湾人かどうか知らんけど)
おしまい
■台湾でローカル飯を食いまくってきた時の記録
日本のモスク飯を探す旅(御徒町の南インド)
食べることが好きだ。
人間の3大欲求の中で食欲が突出して高い欲望と言い切れるし、ご飯を食べ終わると次のご飯のことしか楽しみじゃなくなる。
そして、羊肉が好きだ。
肉の中で一番好きだ。昨今の羊肉ブームのおかげもあり、羊肉を扱う飲食店が増えたし、スーパーでも羊肉が置かれていて自分で調理することもできる。
近所のスーパーで羊肉が手に入ったので嬉しくて自作してしまったプロフ、イスケンデルケバブ、ラグメン(左から)
だがしかし、羊肉愛好家としては未だに羊肉不足っ....! 圧倒的羊肉不足っ....!という思いを禁じ得ない。
そんな時、頼りになるのは何か?
そう、ハラールフードである。
ハラールフードとは、みんな大好き安定のムスリムフレンドリー食材のことだ。そして、その食材のみを扱うハラールレストランに行けば間違いないと感じる。
ふとした瞬間に突然現れる町のハラールレストラン
しかし、このハラールレストランが曲者で、いざ行こうと思った時に限ってどこにあるのか分からない代物なのである。
トルコ料理がハラール料理なのはなんとなく想像がつくが、意外と見つけることができない。逆に、至る所にある(体感的に2駅に1店舗くらいの割合で見つかる気がする)インド料理屋だが、店によってはハラールの文字がある。身近にあるようなないような、ますます分からない。
もともと同じ国だったパキスタンやバングラディシュがイスラム国家なので、インドにイスラム教徒が多いことはある程度納得出来るがどうしてもヒンドゥーのイメージが強い
そういう時は、モスクに行くに限る。
モスクに行けば近くに美味しいハラールレストランがあるに違いない。
日本国内のモスクについてあまり考えたことはなかったが、ある意味観光スポットみたいななっている東京ジャーミーではなく(勿論、あそのでも普通に礼拝してますが)、そこら辺の神社やお寺みたいな感覚の「地元モスク」はないのだろうか。
ちなみに東京ジャーミーは日本最大級のモスクだけあって圧倒的な迫力だし毎週土曜日の集団見学会は飛び込みOKかつ興味深いのでお勧めです
そう思ってググってみると、首都圏近郊だけでも割と沢山のモスクが存在することが分かった。思い立ったが吉日と行ってみることに。
在日ムスリムは10万人以上とも言われているらしいからある程度の数のモスクがあっても不思議ではない
とある雨の降る日、東京のなかでも屈指のインターナショナルエリアである御徒町に降り立ち早速調査開始。
とともにすぐにモスクを発見した。思いの外周囲の風景と調和している。
「細長っ」って思った
下手したら神社とかお寺の類いよりも見事な溶け込みっぷりだ。東京ジャーミーみたいなのを想像していただけにその佇まいの庶民っぷりに思わず好感度が上がった。
辛うじて屋根の部分はイスラム感出して主張している
正面にまわってみると、ただでさえ細長い建物だが入り口がふたつあり、どうやら礼拝スペースは右側のさらに細い塔であることが分かった。ホントはもっと広くしたいだろうに、日本の土地価格問題は在日ムスリムも悩ませているようだ。
さて、モスクある所にはハラールあり、という事で周囲を見渡すと直ぐ近くにありました。ハラール食堂が。
どうやら南インド料理の店の様でその名もズバリ「ベジキッチン」。流石に野菜だけであればハラールに引っかかるまい。(酒もダメか)
同じような器が沢山並んだ様がまるでドラムセットのようで美しい
南インド初心者としてはタイトルトラックたる「ベジキッチンセット」を頼むと3種類のカレー(全部ベジ系)、ライス(嬉しいバスマティ米)、ココナッツ風味のミルク粥的なもの(激ウマ)、パパド(煎餅的な何か)、緑色のナンが到着。自分はベジタリアンでもビーガンでも無いんですが、流石に旨すぎて狂いましたね…
ハラールと言うとよく分からなくて敬遠しがちだが、インド料理はある意味日本人にも市民権を得ていることもありそこまで抵抗感が無いはず。
ということで、友達がムスリムでどこでランチしたらいいか分からない!とか、菜食主義者なのでランチ難民になる!とかいった皆さんの要望をかなえる素敵なレストランです。是非ご賞味ください!(モスクへのお参りも忘れずに)
以上!!!!!!!!!!!!!
飯系インスタグラマーのつもりだったもののいざ見返してみるとシズル感は皆無だった
蘭州ラーメンはウイグル料理の代わりになり得るか
突然だが(このブログにおいてはそんなに突然でもないが)、ここ数年間の間、中国の西北部にある新疆ウイグル自治区に行きたくてしょうがない。
しかしいくら中国が日本のお隣に位置していると言えどその広大な国土の西の端とくれば日本からの飛距離は半端ではない。
東京から新疆ウイグル自治区の首府であるウルムチへ行く飛行機をスカイスキャナーで検索したところ、最短でも10時間以上かかるらしい。とても日本の貧弱な3連休ごときでぷらっと行けるところではないのだ。
飛行機国内線の直行移動で5時間越えは日本ではなかなか考えられない
なかなか行けないならば日本国内でウイグル料理を出す店に行くと言う代替案があるが、残念ながら東京にあるウイグル料理店はかなり限られているし、どちらかというとみんなで囲むエスニック料理屋枠なので、1人でぷらっと入って定食を頼むという感じではない。ような気がする。
2020年現在3店のみが確認されている
いくらウイグルといえど一応国としては中国なのだから、中華料理くらい身近に新疆ウイグル自治区の料理を食べることができないものだろうか。
そんな事を毎日考えていたところふと気が付いた(普通にタイトルに書いてるが)…もしかすると、蘭州ラーメン屋に行くことで僕の中のウイグル欲が満たされるかもしれない。
蘭州ラーメンとはその名の通り甘粛省の省都である蘭州が世界に誇るラーメンで、この甘粛省が新疆ウイグル自治区と隣接している事からも分かる通りイスラム教徒が多く、牛肉を使う事で有名な蘭州ラーメンも正真正銘のハラール食なのである。
内モンゴル自治区、寧夏回族自治区、新疆ウイグル自治区と民族自治区に囲まれまくっている甘粛省はなかなかアクロバティックな形をしている
ここで誤解しないで欲しいのは、ウイグル料理を食べたいけど蘭州ラーメンで我慢する、的なものではない。蘭州ラーメンは蘭州ラーメンで異なるステージ上の食べ物であって比較したり代替したりできるものではない。
ここでの僕の提案とは、ハラールを売りにする蘭州ラーメン屋で汁無し麺のメニューを頼むとウイグル名物・ラグメンが出てくるのではないか?という事である。
という事で、早速"リアル・チャイナタウン"である池袋で調査してきた。
エントリーNo.1:蘭州拉麺店 火焔山
池袋における中国勢力の総本山、北口エリアに君臨する有名店(多分)。店内ではバッチンバッチン麺を打つ音がデカ過ぎて初めて行くとビクッとします。
入り口にベビーカーが置いてあるところを見ると地域密着型なのかも知れない
メニューを見る限り、羊肉串焼きやナンなどの説明として新疆を謳っているので期待が持てる。というわけで、殆どの人が注文するであろう牛肉麺ではなく「焼きそばクミン味」を注文。理由は英語表記が"Xinjiang Style Fried Noodles"となっていたのと("Xinjiang"とは新疆のこと)、単純にクミンが好きだったからだ。
出てきたものは手打ちならではの太さが若干不揃いでコシのある麺、羊肉とクミンのエスニック感が合わさって""控えめに言って最高""だった。
麺の種類を選べるので三角麺を選んだところ、炒め麺だと角が取れちゃうからと、メニューに載ってないサイズ(細麺よりも太い)の丸麺で作ってくれた
エントリーNo.2:薩斐(Safei)蘭州ラーメン
こちらは北口ではなく西口にあるお店。店名に「池袋本店」とあったが他に店舗があるのかは不明。少なくとも検索しても出てこなかった。そしてホームページの作りが先程紹介した火焔山と全く一緒。色々と考えさせれられるところが多い。
しかしながら正面看板には、砂漠の絵、ハラール認証、「西北料理」の文字と、期待できる要素しかない。
後になってこの写真を見返してみると、お店に対して垂直に突き出ている側の看板はモノクロの麺打ちシーンがプリントされていることに気づいた。これは本当に看板に載せる必要のある情報だったのだろうか
ここで頼んだものは蘭州混ぜ麺。これは炒め麺ではなく餡掛けうどん(というかラグメン)に近いもので、ここでも麺の種類が選べたので三角麺を頼む。これも大当たりで、コシのある麺にちょっぴりスパイスの香りがする独特の具が合わさって、"マーベラス"としか言いようがない代物であった。
初めて行く牛肉麺屋で牛肉麺を頼まず、ランチタイムにもかかわらずランチメニュー以外のものを頼む感じ、富士そばに行って煮干しラーメン(一部店舗限定)を頼むような心地の良い罪悪感がある
エントリーNo.3:火焔山 新疆・味道
これは最初に紹介したお店の系列店。もうはっきりと「新疆」と書いてある通り、そっちの料理を売りにしていることがヒシヒシと伝わってくる。
ついに看板の文字にウイグル語が登場
店に入ると、店員がメインの客席で堂々とディナー用と思しき串焼きの仕込みをしていて入店客に見向きもしない雰囲気に本場の味を確信しつつ、ランチメニューにある新疆風ピラフ(ポロ、プロフのことですね)に後ろ髪を引かれつつも、ここはラグメンをストイックに味わいたいという意志から牛肉のラグメンを注文。そちらがこれ。
見た目は100点
食べた感想としては、文句なしに美味い、でもなんか違う、というものであった。
出てきたのは完全にラグメンの見た目をしているし、とても美味しかったのだが、なんか違う。味が中華丼的だったというか、ウイグル料理っぽくないのだ。これは確かに新疆ウイグル自治区で食べられている料理なのかもしれないが、あくまでも中華料理であって、ウイグル族の民族料理ではないというか…
まあ、店員さんはみんな漢民族のようだし、これはあくまでもウイグル料理ではなく新疆地方の料理なんだと思えば看板に偽り無しですね。ということで、ウイグルの香りを求めていくと少し違和感があるかも知れないが、イスラム中華を食べる!というつもりで行くと良いかと。味は流石中華という感じで美味でした。
結論
こうやって中国の西北にあたる地域の料理を食べ歩いたが、そこで提供されるものは確かにウイグル料理っぽいしこれはこれでとても美味しいんだけど、やっぱりこれは中華料理なのだ、という当たり前のことと、中国西北料理というジャンルの奥深さであった。
これからはウイグル料理の代わりに中国西北料理を食べようなんて失礼な事をせず、ちゃんと西北料理を食べに行く意思を持ってこれらの料理屋を訪れなければならないと強く感じたのである。(またディグるべき食ジャンルが増えてしまった)
おしまい
今こそウズベク看板の素晴らしさについて語ろう
今、中央アジアが熱い。そこで、2019年10月に念願の中央アジア初上陸をしてきた。いずれは全制覇を目指して、第一弾としてまずはウズベキスタンに行ったのだが、そこでウズベク看板の魅力に取りつかれてしまったのでそのお裾分け()をしたい。
◆はじめに
ウズベキスタンは控えめに言って素晴らしかった。もっと言えば素晴らし過ぎた。日本で何かと誤解されやすい「スタン系」一派でありながら今一番キている旅行先ということもあり、現地では日本人団体客は沢山見たし、女子旅と思わしき女性だけの個人旅行者も数組見た。(オッサン1人旅はそんなに見なかった)
ウズベキスタンの素晴らしさはインターネットで検索すればいくらでも出てくるし、最近はウズベキスタン専門のガイドブックもある。というわけでウズベキスタンの旅行記・体験記はそちらで見てもらうとして、今後ウズベキスタンに行くであろう皆さんには、多分ガイドブックには載らないウズベキスタンの看板の魅力について知ってもらいたい。
単体で見ると何の変哲もない立て看板ではあるし、最初は自分も何も感じなかった
◆自立タイプの看板(立て看板)
中央アジアを歩いて居ると沢山の立て看板を見る。しかしとにかくどこも同じようなメニューのラインナップ、同じようなフォント、同じようなデザイン、同じような色合い(赤~黄色系)…一度意識し出すと気になってしょうがない。
後で写真を見返していて気づいたがこの看板なんか1枚目のものとほぼ同じ。でも画像の配置が微妙に違うし店ごとにオリジナル要素があるのかも…
そもそも、ウズベキスタンの庶民的な食堂はだいたい同じようなメニューで同じようなものしか出さない(様に思えた)。日本の飲食店のように創作メニューの開発に精を出したり、同じようなメニューであっても他店との差別化を図ろうとする意思は無さそう(に見えた)。
看板もそれに倣っており、殆どの飲食店では最初に大きく「ош」(オシュ、ピラフみたいなもの)と書いてあり、だいたいメニューには「лагмoн」(ラグマン、スープうどんみたいなもの)、「шурба」(ショルバ、スープみたいなもの)、「манты」(マントゥ、饅頭みたいなもの)、「шашлык」(シャシリク、串焼き)などなど、同じようなラインナップが並ぶ。
寧ろ、いざお店に入るとメニューが無い店にいくつか出くわした。表の看板が全てを物語ってると言うか、みんな大体同じようなものしか頼まないからメニューなんて甘ったれたものは必要ないのかも知れない。(そのおかげで、お会計するまで値段が分からないし、請求された値段が正規価格なのかも分からない)
このお店にはナン(中央アジアのパン)とかチャイ(中央アジアのお茶)セットの写真がプリントしてあるなど、他店との差別化を感じる。そして「ламoн」という文字が見えるが、これはラマンという別の食べ物なのかラグマンの「г」がタイプミスで抜けただけなのかは謎
◆壁掛けタイプの看板
勿論この傾向は立て看板に限った話ではない。壁張り付けタイプについても紹介しよう。ここでもオシュ、ラグマン、マントゥといった王道料理が並んでいる。
そういえばこのお店を見かけた時、僕はオシュが食べたくてしょうがなかった。そこでオシュを最上部に掲げているこのお店に入ったのだがこのお店にはオシュは置いていないようだった。というか写真中央部の青い看板の軽食メニューがその店のメニューらしく、とりあえず油たっぷりの揚げパンと、砂糖が入りすぎて飲むと逆に喉が渇くお茶をいただいた(揚げパンの威力が強力だったので結局お茶はおかわりした)。
両側の紫色看板は一体何だったのかは謎。ちなみにошはウズベク語(及び近隣民族語)だがロシア語ではпалов(プロフとかパロウとか)とも言う。と、道中で出会ったウズベク人に教わった
しかしどの看板も若干違えど殆ど同じような食べ物画像が踊っている。みんなこのためにわざわざ自前で料理画像を調達するのだろうか?
と思いながらこれらの画像をまじまじと眺めていると…
真ん中あたりに何やら文字が…
マントゥの画像を拡大してみると「ISSYK-KUL.ONLINE」と書いてある模様。この店の名前か?という線もあるがイシククルとは隣国キルギスの有名な湖なのでこの店がそんな名前を付けるとも思えない…(台湾のお店が「琵琶湖」とかつけたり日本のお店が「九寨溝」とかつけるようなものか?)
それか、上記のサイトが実は「いらすとや」的な立ち位置で転載自由なのかもしれない…(だとしたら画像に自サイトの名前なんか埋め込まないか)(いや、別にこれが無断転載と断定しているわけではない)
◆食堂以外のバリエーション
そしてこのような看板の傾向は食べ物屋に限った話ではないようで、コスメ用品の広告もこの通り。
色合いとか画像の配置に目が行きがちだが、よく見ると唇の画像やモチーフが大量にあって若干の恐怖感を覚える
とりあえずスタイリッシュなコスメ道具を沢山並べればそれだけスタイリッシュ度が増すだろうみたいな、足し算のみの理論が清々しい。
コスメの宣伝には必要と思われるオシャレさとか洗礼された感じとか、そういった要素は大丈夫なのかと心配になるが、むしろこちらセンスの方が先を行っているのかもしれない。そう思って考えてみると僕は普段コスメの広告など全く見ないし、実は日本の広告もこんな感じなのかな?
そしてこの「沢山並べたヤツが一番強い」理論はウズベク人の心の拠り所、ナン売り場の看板にも表れている。
このナン販売所では上部の看板は少しばかりスタイリッシュで普通のお店のように見えるが下部に目をやると完全にいつもの""あの""感じで、画像ペーストのオンパレードである。
個人的にはナンの画像は1種類につきひとつだけあれば情報としては充分な気がする
確かにウズベク人はナンを沢山並べる。並べるだけではなくて積み上げる。沢山積みあがって光沢をもったナンを見ると、確かにおいしそうで買ってしまいたい衝動に駆られる。
それは分かるのだが、それを画像でも表現しなくても良いのではないか。というかもっとそれっぽくなる画像の作り方は無いのだろうか?
◆おわりに
ウズベキスタンに行ってから数か月が経過したが、今でも時折あの看板を思い出す。
情報過多なように見えて大した情報を得られないような気がするあの看板だが、遠く離れた日本人の心をここまでつかむ時点で、実は宣伝効果としては侮れないのかもしれない。
ちなみに冒頭で中央アジア第一弾としてウズベキスタンに行ったと書いたが第二弾があるのかは全くの未定である。
また魅惑のスタン系国家の地を踏めることを毎日祈っている。(唯一神アッラーに)
これは正真正銘の3次元のナン画像だが、あの看板たちを見続けると何故だか2次元の合成画像に見えてくる不思議